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研究会長挨拶

 第6回精神心理領域理学療法部門研究会のテーマは「事例から学び、エビデンスを構築する」としました。根拠に基づく理学療法(Evidence-based Physical Therapy:EBPT)という言葉が理学療法士にとって一般的となっていますが、精神心理領域の理学療法においては未だエビデンスが乏しく、エビデンスを「つくる」ことが求められています。さらに、精神心理領域では患者個人の背景や人間関係を理解するために、Narrative Based Medicine:NBM(物語と対話に基づく医療)の実践も重要です。
 この研究会では、講演や研究発表をもとにエビデンスを構築するきっかけをつくるとともに、事例報告も積極的に行い、個々の事例から学ぶことも大切にしていきたいと考えています。全国から最新の知見や実際の取り組みが報告される本研究会は、精神心理領域において理学療法士の活躍の場を広げる上で、意義深いものであると考えます。

 

 2020年の診療報酬改定では、精神科療養病棟における疾患別リハビリテーション料の算定が可能となり、精神科領域での理学療法士の活躍が期待されています。今後、より多くの理学療法士が精神科領域でのリハビリテーションに携わり、患者と社会の利益に貢献するためには、過去の知見を整理し、未来への展望を示す必要があります。そこで、教育講演では武蔵野中央病院の細井匠先生に「精神科領域における理学療法の過去・現在・未来」と題してご講演いただく予定です。
 また、精神科療養病棟において疾患別リハビリテーション料が算定できるようになった背景には、精神科入院患者の高齢化による身体障害の合併や転倒事故の深刻化があると推察されます。特別講演1では、首都大学東京から樋口貴広先生をお招きし、「歩行の知覚・認知制御:精神疾患に対する転倒予防への示唆」と題してご講演いただく予定です。樋口先生は知覚・認知と歩行の制御に関する研究を数多くされており、今回の内容は理学療法士が精神疾患患者の歩行練習や転倒予防を考える上で、貴重な示唆に富んだものになると確信しております。
 

 特別講演2では、ATR認知機構研究所の浅井智久先生をお招きし、「統合失調症を身体と運動から理解する:行動・脳・介入研究の融合から」と題してご講演いただく予定です。浅井先生は、心理学の立場から自己感や身体性などについて基礎研究からアプローチされています。今回は、統合失調症の症状や自己感といった行動や主観レベルの体験が、どのような脳内表象になっていて、どう介入・変化させられることができるのかといった視点でお話いただく予定です。

 今回はCOVID-19の影響を考慮し、オンラインでのWeb開催といたします。新たな形態での開催となりますが、参加者の皆様が安全に安心して参加できるよう準備を進めてまいります。例年通り活発な研究会になるよう、皆様のご参加、演題のご応募をお待ちしております。


第6回精神・心理領域理学療法部門研究会
研究会長 石橋 雄介

 

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